習慣少年ダイアリー

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バクちゃん 現実をファンタジーで描く、移民の現状

可愛らしい絵で描く、世の中の厳しいシステムの中で生きる、私達のすぐ隣にいる人達の物語。

増村十七先生が描く[バクちゃん]は、バク星からやってきたバク星人のバクちゃんが、地球の日本に住む物語だ。スペース線の列車、ホログラムでの入国審査などテクノロジーに溢れた描写がふんだんに出てくるが、実は舞台は未来ではなく現代だ。2010年、バク星と地球との間で友好条約が交わされ、活発な交流が期待された。

しかし、温厚で勤勉なバク星人の“夢を食べる”という特性は、地球人に未知の不安を与えた。バクちゃんも日本に来てすぐ入国審査の時と、世話になる下宿先の人物に「犯罪をしないか?」と不躾な質問をされている。
[バクちゃん]が描いているのは、現代の“この”日本で移民が感じる生き辛さだ。慣れない文化、先行する勝手なイメージ、他国で身分を証明する手掛かりの少なさ、無意識の差別。
バクちゃんは日本での永住権を手に入れる為、ハンコ・銀行口座・携帯電話・職など、世界に自分を説明する道具を探していく。僕達がこの国で、産まれた時から持っていると言っても過言ではないものまで。

大変な思いをしてまで日本に移り住むのは、バク星ではもうバク星人の主食である“夢”が枯渇してしまったからだ。区民館の移民センターでは他の星の星人達もそれぞれの理由で日本に来たことが描かれている。
日本で生まれ育った結果、元々持っていた特性や言語を使えなくなってしまった者もいる。生まれ故郷が消滅し、日本で働かざるを得なくなってしまった者も。

マンガの良い所の一つが、『楽しく読める教科書』に成り得る所だと思ってる。僕は[バクちゃん]を読んで、今まで自分が当たり前に持っていたものと、日本で出来た移民の友達が努力して得たものを少し考えた。

とはいえ、[バクちゃん]が描くのは辛辣な話ばかりではない。バクちゃんが経験する日本での楽しい出来事、優しい人々、それら全てもこの国で得たものの一つだ。
また、[バクちゃん]では日本語の読みが難しい人に配慮し、全ての漢字に読みがなが振ってある。
願わくば数年後のバクちゃんが、移民先に選んだこの国を、日本を好きでいてくれていますように、これからも見守っていきたい。