習慣少年ダイアリー

マンガのこと7~8割 自身のこと2~3割

シリアスな笑いを極めた「謀略のパンツァー」

笑いにもいろんな形があって、ベタ・シュール・空かし・天丼・共感、その他いろいろな種類やテクニックがある。

古田朋大先生の描く[謀略のパンツァー]は、その中でも“シリアスな笑い”を極めた作品の一つと言える。

“シリアスな笑い”とは[バクマン。]という作品の中で使われた用語で、文字通り「シリアスなシーンなのに笑ってしまう」事を指している。現実で言うなら、『ガチガチに緊張している子供がミスしたのを見ると笑ってしまう』ような“緊張”と“緩和”だ。テレビ番組の『ドッキリ』もそうだ。本人達が真剣であればあるほど見る側は笑えてしまう。

[謀略のパンツァー]の主人公は王海学園の生徒会長である男の子・真澄レイ。成績優秀・品行方正で人望も厚い。

思春期の男の子なので、エロスにも多大なる興味がある。しかし真面目が故、「エロス目的で女性と付き合うのは如何なものか?」という理性が働く。本能が理性を超える前にどうにかせねばと、レイが考え出した究極の方法が『ハーレム漫画の主人公になる』だった。

ハーレム漫画の主人公になりさえすれば、スケベな事が起きても女子は傷つくどころか、むしろ主人公に好意を持っていく。全員が幸せになれるその為に“その優秀すぎる頭脳を、ラッキースケベを人工的に起こす為に全振りする”コメディだ。

[謀略のパンツァー]はほぼ全員が変態でボケであり、会話にほとんどツッコミが存在しない。ボケであるキャラクター達は真剣に、パンツを見る者とパンツを見られる者の攻防を繰り広げる。ならば必然的に

ツッコミ役となるのは我々、読んでいる読者だ。

レイがパンツを見る最初のターゲットに選んだのは、風紀委員長・アン。アンのスカートの中を覗く為、レイは時間帯・高低差・花火大会の打上花火等を駆使し、あくまで“偶然を装って”アンのスカートの中を覗く事に成功する。

しかし、パンツは見れなかった。

何故なら、パンツを狙う男子を懲らしめる為、アンは『パンツを穿かない』という究極の防御法を取っていたからだ!

スカートの中を覗いたのに、パンツが見れなかった事に愕然と崩れ落ちるレイ。ここから、レイとアンのパンツを巡る攻防が始まる。

このように[謀略のパンツァー]では、[デスノート]や[賭博覇王伝カイジ]のような手に汗握る頭脳と心理の攻防が、“パンツ”を中心に繰り広げられる。真剣であればあるほどもはや馬鹿馬鹿しすぎて、エロスより達成感やスポーツのような爽やかさが前面に押し出されていく。

“シリアスな笑い”という一本槍を磨きに磨いて物語が進んでいく。

[謀略のパンツァー]は全4巻の間に個性的な“パンツァー(パンツを見る者)”、可愛いくて魅力的な女の子がたくさん出てくる。

また、伏線やギミックもたくさん仕込まれていて読み応えのある面白い作品となっているのでぜひとも読んで欲しい。

「誰も傷つけない」主人公の優しさと、馬鹿馬鹿しさが詰まりに詰まっている、唯一無二の作品です。